竹の渓流竿2本
一本は渓流竿の典型的な姿。やや太めの淡竹手元。これは一日中打ち返す釣り方のため持ち重りを排す目的。また、25cmから尺程度のヤマメを抜き上げるためにある程度は竿の力を必要とするため。それほどの長さは必要ではないために、仕舞い寸法は短めに仕上げているのも標準。91cm切りの5本継ぎ、全長は4mである。渓流竿として一番使いやすい長さだと思う。重さは200g。重心を計れば、持ち重りに関わるモーメントがはっきりするが、比較のために全部やるとなると大変なので省略。最初から全部の竹竿の分析項目としてやっておけば良かった。重心は竿尻が何cmのところという具合だ。手元竿の太さから見て、多分持ち重りは少ないであろうということに留めておく。ごく普通の作りであるが無銘である。逆に銘が付いていてもおかしくない作りである。塗りはいわゆるカラシ色。ちょっと竿敏のデラックスの塗りの色に似ている。珍しくはないだろうが、それほど多いという塗り色ではない。
もう一本は一見して渓流竿ではないように見える。塗りは普通の黒。手元は淡竹元ではなく、細い矢竹元でここだけ見ると姿は普及竿の作り。ところが。なんと渓流竿としてはかなりの剛竿である。尺ヤマメ、尺以上のイワナも抜けるような強さがある。イワナでもいけるが、ニジマス用として想定された竿ではないかと想像する。

竿尻の巻きは5本もある。だいたい、ここの巻き数が多いとそのジャンルの中で強い竿という暗黙のルールがある。これが、はっきりした共通ルールなのかどうかは知らない。とにかく強い竿で、例えば、穂持ちと穂先を並べて比較した写真でよく見ると違いが分かる。もう一本、上はハヤ竿の剛竿の穂持ちと穂先である。比べるとやはり細い。
銘は竿喜とある。竿喜は調べてもよく分からない。長さは二間半4.5mの5本継ぎで、重さは220gである。カラシ塗りに比較したら、長さがあるのに軽い。しかも細い矢竹手元であるから持ち重りはカラシ塗りよりはあるだろう。
ところで、渓流竿は普及竿の作りでも口栓が付いているのがお約束のようだ。竿喜の口栓の作りは本格標準の作りである。逆にカラシ色塗りの渓流竿は手抜きの口栓である。口栓の加工工程をひとつ省略しているわけだ。実用にはそれほどの変わりはないが、なにかの拍子に口栓を突いてしまうと、食い込んで口栓が外れなくなることがあり、往生することがある。なので、ここに自分で糸を巻いてそれ以上は入らないように加工している自作の竿がある。
比較に置いたもう一本はハヤ竿の剛竿である。上からカラシ塗り渓流竿、竿喜、ハヤ剛竿。
ということで、竿喜はかなり高級竿の部類に属する。カラシ塗りの方は無銘だが、ごく普通の実用竿である。どちらも磯釣り入門時代に竹の石鯛竿を探して釣り道具屋巡りをしているときに入手した。かなり昔である。まだ他にもあるが、手頃で値打ちのある竿だけ選んだわけで、良い竿でも高価な竿は当然にパスした。だいたい、そういう目的ではないので交通事故のように求めたにすぎない。で、ごくたまに渓流釣りをやった程度で使用頻度は低い。ハヤ竿と違って、渓流竿は長さの関係で磯の小物釣りには使いにくい。竹の渓流竿が現代のカーボン渓流竿に太刀打ちできないのは、なんといっても重さである。一日振っているとかなり疲労するだろうが、そんなに一生懸命釣りをしなければ良いわけだ。釣果第一ではないということにつながる。そういう釣りをしたいと思うが、いまさら片手間以上の渓流釣りは、多分しないと思う。釣り場にもよるが、磯釣り以上の体力が必要かも知れない。石鯛なんてぶっ込んで待っていれば良いのだ。
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