明治の日本。G・ポンティング
100年前の写真家。日本ではステレオ写真の愛好家しか知らないだろう。でも、写真の歴史にかなり詳しい研究者レベルならば名前を知っているかも知れない。
ところが、「すぐ分かる作家別写真の見かた」(岡部昌幸・東京美術・平成17年・2000円)という受験参考書のような、お手軽ハウツー教養のような本をパラパラ立ち読みしていたら、並み居る歴史的著名写真作家の中に堂々とポンティングが入っていて驚いた。で、この本を買った。よく網羅されていて、解説寸評の教科書的羅列ではある。わたくしも含めて、お手軽大衆化という面では、これはこれで悪くないと思った。
ポンティングはステレオカードの大手、アンダーウッド社とHCホワイト社とも契約。日本中を旅行してステレオ撮影したことで、ステレオファンには知られている。彼が撮影した双眼写真はステレオカードとなって大量に流通した。そこには1900年前後の明治時代中期から後期の日本が見事に残されている。
小学館から立体写真集「NIPPON 明治の日本を旅する」編・伴田良輔1994年が出ており49ペアーの双眼写真を見ることができる。そのころはランダムドットの3Dブームの時だった。ステレオ写真ファンはその当時、小学館は立派だと尊敬し、とても喜んだ。すばらしいと思った。
Herbert George Pontingは1910年ロンドンのマクミラン社から、In Lotus-Iand Japanを出している。原題は「蓮の国日本にて」。蓮がギリシャ神話の食べ物とすると、訳者あとがきに書いているように、「この世の楽園・日本」という意味か。この抄訳が「英国人写真家の見た明治日本」だ。腰巻きにはスコット南極探検隊同行写真家の「百枚の写真で甦る百年前の日本」とある。講談社学術文庫・2005年・1100円。幕末、明治の西洋人による日本旅行記はなんとなく興味があり、おもしろくて何冊か読んでいるが、文庫本になったときに、あのポンティングだということで早速に拝読した。非常に好意的で日本の風土、風俗と日本人を賛美している。双眼写真の片方の普通の単眼写真だが、100カットが掲載されている。現代の日本人が読むと、むずがゆくなるようだ。それは何だろうか。明治の中期後期の日本社会には江戸時代が半分は残っていたのか、と、はるかに思いを致している。絵のように美しい日本の自然。わたくしの年代でいうと、祖父がやっと生まれた時代だ。
その後、ポンティングは1910年から12年、悲劇の英国スコット南極探検隊に写真と映画のカメラマンとして参加。おおお、そうなのか。で、スコット隊長の南極点アタック隊とは別に12年3月に帰国している。先着された絶望と遭難が判明したのは11月だそうだ。映画と写真は大変な評判となった。1921年「The Great White South」が出版され、1950年まで14版を重ねたロングセラーとなった。こちらの業績は彼の死後、写真集がいくつか新編集されているらしい。探しても簡単には見つからないだろうなあ。オフセットカラー印刷らしい。彼の活躍した時代のリアルタイムの写真集もあるが、もっと難しいだろう。
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