明治の日本。おもしろ写真
彩色写真というものをご存じだろうか。手書きの総天然色である。双眼写真にはまいった、というレベルのものが多いが、彩色写真にも、恐れ入りましたというものが少なくない。え、これが幕末明治の写真なの、と驚く。主に本国に帰る外国人のお土産用である。ちょんまげの立派な武士がフルカラーなのだ。
古写真の入門書というか、とにかくおもしろいのは、石黒敬章のもの。この人は肩もこらないし、いいねえ。軽さが好きだ。わたくしはファンの一人というべきか。石黒敬七コレクションを引き継いだ、由緒正しい御仁である。
石黒敬章の基本定番として「幕末明治のおもしろ写真」1996年・平凡社コロナブックス1600円と、「続幕末明治のおもしろ写真」1998年・同がある。これは、まったく無地白紙のごく普通の人にもお勧めできる。
ただし、双眼写真についてはごくごく僅かしか触れられていない。写真館の鶴の探索だ。しかし古写真では手頃だし、本屋にある。その後もこの人の古写真編纂ものがいろいろ出版されています。
石黒は、本のあとがきで、つぎのように書いている。「1987年、朝日新聞社から(甦る幕末)が発行されました。ライデン大学のコレクションを公開した写真集です。中略。(幕末に長崎出島に来た、ボードワン兄弟がその当時収集した写真)と同等の珍写真を、百数十年も経た今になって、しかも小遣い程度の資金で集めることはとてもできません。」
そこで石黒は、切り口をひねり、古写真を読み解くおもしろさに絞ったという。屈指の古写真コレクター、石黒がそうなんだから。古写真のコレクションなど普通の人はできっこない。なにかの時によほど絞ってとしてもだ。欧州古都の、それも東欧あたりの骨董品屋の隅に埃をかぶって眠っているかも知れないが。たまたまそういうのを買って帰る人はいらっしゃるだろう。ザザビーとかいうオークションにベアト撮影古写真が出るかも知れないが。普通のお値段ではないだろう。エジプトスフィンクスのサムライや、ナダールスタジオなどはその筋の誰でも知っているから天文学数字。
しかしながら、「甦る幕末」の写真を見たときのインパクトは強烈である。石黒は珍写真といっているが、時代を写している良い写真ばかりである。繰り返し何回見ても濃厚な感動ものである。類書の中では群を抜く。と思う。
同じ朝日新聞から、「甦る幕末」と前後して1986年に「読者所蔵古い写真館」が発行されている。編者の後藤和雄は朝日の写真部の人だが、古写真研究で知られる。この中に薩摩藩主島津忠義のステレオカメラとリシャールのビューアーが出ている。鹿児島の尚古集成館の保存されているそうだ。
ステレオ写真は桜島と江戸城、少年剣士の3ペアーをみることが出来る。しかし、ややや、という双眼写真が掲載されている。立体写真機をロンドンから購入した際に見本として送られてきたガラス彩色ペアーのノートルダム寺院。右と左で前掲の石が全然違うのだ。どういうわけか。左右同時撮影しなければこのように撮影はできる。しかし、見本としてなぜ、頭をひねっても分からない。ハイレベルとすれば、視野闘争
という現象がありまして、このような双眼撮影の場合は、ビューアーでごらんになりますと、このように見えますよ、、、という説明見本なのか。だとすると、すごいね。
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