キンダー
ウイスコンシンのサウスミルウォーキーにあったキンダー社が1954年に発売したステレオカメラ。設計したのはステレオリアリストを作り上げたシートン・ロックワイト。生産台数が少ない。設計基本思想はリアリストとほぼ同じ。ただ、コストダウンを徹底した。たしか、99ドルで発売している。当時の他のステレオカメラというと200ドルはしないと思ったが百数十ドルのはずだ。1950年代の貨幣価値ね。どこかでアメリカの広告コピーを見たことがあったが忘れた。キンダーは故障が多いとか品質のバラツキがあるとか言われているようだが、ウチの2台は快調だ。リアリストはすべてに独特の味があり、個性的であり、それが良いのだが、キンダーはリファインされている。アンダーファインダーはリアリストと同じ思想だ。人間工学から当然の帰結である、額、おでこフォールドである。リアリストは上下像合致式の2眼ファインダー。キンダーは普通の一眼式で二重像合致式だ。シャッターチャージは巻き上げ連動の自動。セルフコッキングという。セルフコッキングって知らない、、、。昔のカメラはフィルムを巻き上げてもシャッターチャージされないのが当たり前の時代があった。え、いつごろ。だいたいライカ以前ですが戦後もかなり存在した。たとえばツアイスイコンの各種イコンタ。折りたたみ式のジャバラのカメラ。なにをいっているのか分からない。そうでしょうね。
リアリストと同じ左手シャッター。右手はより微妙なピント調節で使うべきだという思想である。迅速なピント合わせが要求されるときもある。シャッターを切るのは左手でもよろしいだろうという考えだ。右手が利き腕で、右目が利き目でない場合を想定したら、ファインダー位置がもうダメ。フォーカスノブの位置が中央だし。左利き、左利き目ではほとんど使えない。
もうひとつ、巻き戻しがレバー式となっている。バルナックライカも巻き戻しノブで、時間がかかる。これはフィルムマガジンで片道通行にするのが設計思想としては正しかったのだが、普及しなかった。リアリストの次の記事で紹介するが、外付けのクランクハンドルというものがアクセサリーとして生産されている。
肝心のレンズはドイツミュンヘンのシュタインハイルのカッサーF3.5。立派なレンズメーカーだからトリプレットのブランドレンズだが、ごく普通の性能であり、評判も同様。とくに不満はない。柔らかなおだやかな描写をする。レンズグルメ的に厳しく評価すると、もうひとつ落ちたら甘いという寸前、という私感を持っている。シャッタースピードは200まである。だが、スローシャッターが10分の1以下はない。三脚立ててスローを切るなんてことは考えていない。リアリストもそうだが、普通のレンズシャッターではない。ドイツの光学産業、写真工業から見たら、なんじゃこれは、というレベルだ。リアリストもキンダーもアメリカなのだ。シンクロコンパーやプロンプターに遠く及ばない。精密機械工業なんてレベルでなくとも生産できる。それで実用上は差し支えがない。ドイツの精密工業はアメリカの軍需工業に大量生産で負けたのだ。
感心するのは、ド素人でも使えるように親切な表示があること。シャッタースピードダイアル、レンズオープニングダイアルなんて、普通のカメラはそんなこと表示していない。数値があるだけだ。高級カメラにはそのような表示はない。また、二重像合致の説明がひと目で分かるように図が刻印されている。アドバンスフィルムの矢印、リフトツーリワインド表示。フィルム装填の説明。フールセーフというのか、フェイルセーフかな。往時のドイツカメラも日本カメラも高級品だから、取説にはいろいろ書いても、カメラ本体に誰でも知っていることをわざわざ表示しない。二重露光は簡単に可能だ。
キンダーはリアリストに比べると少しだけ5ミリくらいだが小さい。かなりコンパクトに感じる。重さは相当違う。リアリストが790gでキンダーは550gだ。リアリストはずしりと来る。不必要なほど頑丈だ。
シートン設計のステレオカメラはもうひとつある。有名なコンチュラ。こんなカメラを持っていたら廃人である。赤瀬川原平が「コンチュラ物語」という短編を書いているのでご存じの方もいらっしゃるだろう。たしか日本に2台とか。
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